研究概要 |
1。新しい構造相転移物質の探索(1).Tl【H_2】As【O_4】において、DSC測定により-18゜Cで相転移によると思われるピークが見出された。ピークの面積から求めた熱量は〜0.2cal/g。(2).【Tl_3】H【(SeO4)_2】において、DSC測定により開始温度約393゜Cで相転移と思われるピークが見出された。面積から求めた熱量は〜0.8cal/gである。(3).【CsH_3】【(SeO3)_2】において、-128゜Cにあらわれる既に知られた反強誘電性相転移の他に、開始温度で降温時約-37゜C、昇温時-10゜Cに相転移と思われるピークが見出された。面積から求めた熱量は〜0.02cal/g。 2.水素結合によるイオンの構造変化の規則性結晶中の水素結合したP【O_4】イオンHnP【O_4】(n=1〜3)の歪が水素結合の長さによりどう変わるかを、集積したX線・中性子線構造解析データにより検討し、以下の知見を得た。(1).P-O距離,OPO角,O-O距離のBaur歪指数はO…O距離の増加とともに増加する。即ち、P【O_4】イオンの歪は水素結合距離とともに大きくなる。(2).(1)に対応して、いくつかの平均の、または個別の、P-O距離,OPO角,O-O距離もO…O距離と相関を示す。(3).P-O距離,OPO角,O-O距離の平均値は一定に保たれる。(4).HP【O_4】グループの方が【H_2】P【O_4】グループよりも明瞭な相関を示す。(5).O…O水素結合距離の変化によるP【O_4】イオンの歪の変化は、近似的に次のようにあらわすことができる。即ち、O…O距離が増加するにつれて、P原子はHP【O_4】では3m、【H_2】P【O_4】ではmm2の局所対称性を保ちながら、O原子のつくる正4面体の中心から遠ざかる。
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