研究概要 |
スピンの凍結機構を解明するため今年度は以下に示す2つのアモルファス合金系について実験的研究を行なった。 (1)【(Fe_(1-X)M_X)_77】【Si_(10)】【B_(13)】 (M=V,Cr,Mn,Co,Ni)合金 交流帯磁率の温度変化のデータを基にこれらの夫々の合金について磁気相図を作成した。その結果M=Co以外の合金系でスピングラス相が存在することが明らかとなった。しかも反強磁性であるMnとの組合せ【(Fe_(1-X)Mn_X)_77】【Si_(10)】【B_(13)】合金において最も広い組成でしかも高い温度までスピングラス相が存在することが判った。この合金の内部磁界〈H〉の温度変化をメスバウワー効果を用いて求めた結果、〈H〉はリエントラントスピングラス合金ではTgよりも低い温度で、カノニカルスピングラス合金ではTg以下で急峻に増加した。 (2)(Fe,Co)-Sm合金 スピンの凍結機構に及ぼす反強磁性的相互作用の効果を理解するため、低温において反強磁性となるSmとFe,Co合金,【Fe_(100-x)】【Sm_X】(17【<!=】×【<!=】72.5),【Co_(100-x)】【Sm_X】(50【<!=】×【<!=】70)合金の低温磁性をしらべた。 交流帯磁率の温度変化並びに直流磁化(無磁界中冷却,磁界中冷却)のデータからこれらの合金は低温でスピングラスとなることが明らかとなり、その磁気相を決定した。Fe-Sm合金の【^(57)Fe】メスバウワースペクトルの温度変化を測定し、内部磁界の温度変化をしらべた結果、〈H〉はブリリアン関数にのり単調に変化し、【(Fe_(1-X)Mn_X)_77】【Si_(10)】【B_(13)】合金のようにTg以下で〈H〉の増加が見られなかった。 以上の結果からスピンの凍結は強磁性と反強磁性的相互作用とが共存することによると考えられる。(Fe,Co)-Sm合金の場合には局所磁界(結晶場)により誘導される【Sm^(3+)】イオンのJの混合効果が反強磁性的相互作用を生じていると予想される。
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