研究概要 |
当該年度(60年度)には、アモルファスFeC/Si組成変調膜の強磁性共鳴(FMR)の測定を行った。これはこれまでの研究で知見したアモルファスFeC/Si組成変調膜における特異な界面拡散(熱処理でFeC層とSi層が組成的に分離する傾向があり、いわゆる負の拡散が起ったと思われる)と磁性変化との関係をミクロに検討するために行ったものである。 まず、熱処理前のFeC(18【A!°】)/Si(10【A!°】,24【A!°】,36【A!°】)の3ツの試料について面内に磁化した場合、及び、垂直に磁化した場合のFMR共鳴磁場を4.2Kから300Kまで測定した。いずれの試料についても、3本に分離したFMRシグナルを得た。イントリンシックな磁気異方性を零と仮定して反磁場だけを考慮した共鳴式を用いて、ジャイロマグネティック比(r)と内磁場(Ms)を3本のシグナルについて計算した。 その結果、3本のシグナルに対応する3種のMsはいづれもスピン波近似にしたがう3/2来の温度変化を示し、3ツの試料全てについて同様であることがわかった。唯し、4.2KのMs(1),Ms(2),Ms(3)はSi10【A!°】では590,640,710GでありSi36【A!°】では540,650,1300Gである。このような挙動は、FeC/Si膜の強磁性磁気モーメントは一様ではなく場所に依存して3ツに分離していることを意味している。しかも、Si層が厚い程大きな磁気モーメントをもっていることも分る。このようなモーメントの局所的挙動はFeC層とSi層に通常の拡散があって単純に強磁性がSiによって希釈されると云うようなモデルでは説明できない。我々は先きにこの膜では負の拡散を示すことを指摘したが、今回明らかになったモーメントの局所挙動はこのことと関係しているものと思われる。しかし、具体的メカニズムの解明はできなかった。なお、当初計画のCoNb系については、現在、実験が進行中であり、別の機会に報告する。
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