研究概要 |
セリウムやウランを含む化合物にみられる著しく重い有効質量をもつ電子系(重い電子系)について, その起源を研究し, 同時にそれが種々の物質の電子系に現れる一般的な性質であることを明らかにし, それらの物質の性質とくにその超伝導について研究した. 1.重い電子系の起源. 重い電子系は理論的には高密度近藤系とみなすことがでそきる. すなわち, これをモデル化すれば, 電子間に強い斥力が働く局在準位と広がった伝導電子の準位が存在し, その間に電子のとび移りが起こる周期的アンダーソン模型となる. この系の性質を摂動展開の方法と1/N展開の方法によって調べ, 重い有効質量の起源と電子の散乱確率の振舞いを明らかにした. 2.重い電子系の超伝導, 重い電子系においては, スピンのゆらぎによって媒介される引力が超伝導の機構として最も有効であり, その結果, フーパー対は異方的な構造を持つことが期待される. このような立場から超伝導状態における超音波吸収等の性質を明らかにした. 3.局在フォノンとの相互作用による重い電子. 伝導電子が強い非線形性をもつ局在フォノンと相互作用している場合, それらの電子が"重い電子"になることを示し, とくにその超伝導状態について研究した. 4.高温超伝導の機構. 高い転移温度をもつ酸化物超伝導体においては, 銅と酸素のつくる2次元面が伝導に寄与している. 銅のd準位では電子間に強い斥力が働き, 酸素のP準位は伝導帯を形成する. したがって, この系は周期的アンダーソン模型と同じ構造をもち, 重い電子系になる. このような立場から, 超伝導の機構としてスピンのゆらぎの媒介する引力が重要であることを示し, 正常状態, 超伝導状態の諸性質を調べた.
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