研究概要 |
高濃度Kondo効果を示すLa-Ce金属間化合物におけるCe4fスピンのゆらぎをα-α摂動角相関法によって研究した。この方法は中性子非弾性散乱とNMRがもつ種々な制約なしにCeスピンのダイナミックスを研究できる利点がある。 研究課題の一つは時間的微分法による四検出器測定装置の改良であった。主な改良点は検出器として11/2"のNaI(Tl)シンチレーター付きのRCA8575と2"のシンチレーター付きのフィリップスXP2020を各2本混用していたのを2"のシンチレーター付きのXP20204本に揃えたこと、システムをパーソナルコンピューターFM-7で制御するようにしたこと、2チャンネルディジタル波高分析器を試作したことである。このような改良により測定の精度と効率が向上しただけでなく、回路の時間変動を自動的に補償できるようになり安定度と時間分解能が増した。 これまで研究してきた高濃度Kondo系,(La-Ce)Si系,(La-Ce)AL2系をさらにくわしく測定するとともに、(La-Ce)Ni2系を新たに測定した。(La-Ce)Ni2系では全濃度,温度領域で強いゆらぎが観測され、かなり高いKondo温度をもつことが分った。またCe濃度が高い領域では価数揺動による強い摂動が観測された。これらの系で測定された相関時間の温度変化を多重軌道アンダーソンモデルによって解析した。高温では摂動理論の結果と一致し、0Kでは半沢,山田の理論に一致するような補間式を結晶場の影響も取入れて作った。この補間式を用いてKondo温度Tkをパラメーターとして実験値に合わせた。得られたTkの絶対値は従来他の方法で決められた値よりかなり低い値となった。超微細相互作用定数に対するKondo効果の影響が問題で、今後の興深い問題である。
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