研究概要 |
金属微粒子のこれまでの調製法(ガス中蒸発法など)における困難な点を基本的に除いたゼオライト中析出金属での物性測定を行った。今回我々が測定したゼオライト中Ni超微粒子は粒径の異なる三種類である。これらは【Ni_(11)】【Ce_(11)】【Na_9】【H_4】Xゼオライトの水素ガス還元によって作られたものである。Xゼオオライトは結晶中に直径13【A!°】の空洞が規則的に存在し、この空洞中にNiの超微粒子が析出される。 これらの粒径の異なる三種類のNi超微粒子(試料A,B,C)について、液体ヘリウム温度から室温までSQUID磁束計を零点検出器として使用した広温度領域の交流帯磁率測定装置を製作して測定した。 粒径が最大である試料A(半径6【A!°】)の帯磁率の結果は室温から温度が下がるにつれて単調に増加し、約50Kで最大値をとった後急激に減少している。しかし試料B,Cではむしろ室温から温度が下がると、帯磁率は増加せずに減少してゆき、20K以下で急激に増加する。試料Aの逆帯磁率からキュリー定数を求めると含まれるNi原子が二価イオンとして求めた計算値よりも50倍も大きいことがわかった。これはNi超微粒子が強磁性的クラスターになっているとして理解できる。いわゆるsuperパラ磁性である。しかし今までに言われているsuperパラと異なるのは粒径が小さくなると帯磁率のピーク温度が逆に高くなっていることである。これらの実験結果を説明するために、我々は超微粒子の強磁性クラスターにおける磁化の異方性を考慮して、一イオン的ハミルトニアンを導入した。このハミルトニアンから求めた計算式で異方性定数パラメータとして実験値に合わせると、試料A,B,CでそれぞれD=75,330,470Kとしたときに良く一致することがわかった。したがって、帯磁率に現れた特徴的温度変化はNi超微粒子における新しい発見であると考えられる。
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