研究概要 |
本研究はCe(Yb)合金系でみられる特異な現象を対象として希薄近藤問題の厳密解を応用することにより, これらの系の性質を系統的に理解することを目的としている. 3年間の研究により当初予定していた計画のかなりの部分を実行できたと考えている. 以下に研究成果をいくつかに分類して簡単にまとめ残された問題について述べる. 1)静的物理量:希薄系の厳密解を用いてCeAl3CeCu_2Si_2の比熱に現われる異常の説明を行い(60年度)さらに今年度の研究で低温での帯磁率, 磁化曲線も矛盾なく定量的に説明できた. 2)動的物理量:1)の場合と同様に希薄系の厳密解を直接適用することによって核磁気共鳴, 中性子散乱でみられる特徴のいくつかのものに定性的解釈を与えることができた(62年度). 3)輸送係数:本研究のアプローチでは輸送係数の計算が最も困難であり3年間を通しての大きな課題であった. これに関しても多くの有用な結果が得られたと考えている. 先ず希薄系に対しては種々の輸送係数が低温で正確に計算できることを示し, 磁気抵抗や熱起電力等について多くの正確な知見が得られた. 高密度系では厳密な計算は不可能であるが単一サイト近似を授用することにより, Ce化合物でみられる磁気抵抗, 熱伝導度, ローレンツ比の異常を説明することができた. 4)まとめと課題:価数揺動系の研究分野が主にCe系に移行したのでここでもCe系の性質に重点を置いて研究を行った. 当初の第一の目的は1)〜3)の物理量を系統的にさらに定量的に扱うことであったが, これについてはかなりの部分が遂行できたと考えている. 第二の目標としていた高密度系に特有の効果については3)で述べた様に粗い近似でこれを取り込むことができた. しかしこの取り扱いはかなり現象論的なものであり, 高密度系に特有の効果をより微視的に扱うことが今後に残された最も大きな課題である.
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