研究概要 |
1.昨年度開発した、非マフィンティンポテンシャルの計算を行うLAPWのプログラムを、大阪大学大型計算機センターに61年5月に導入された、スーパーコンピューター,SX-1で動作テストを行ったところ、計算速度の点で問題があることが判明したので、その改造を行い50倍程度の高速化に成功した。 2.プログラムの動作テストをかねてCe【O_2】の電子状態を計算した。Ce原子と酸素原子の強い共有結合性を反映した電荷分布が得られた。しかしエネルギーの波数依存性に対する非マフィンティンポテンシャルの影響は意外に少なく約10%のバンドの広がりが見られただけで、その形はこの効果を入れないときとほとんど変わらなかった。結果は61年秋の日本物理学会で発表した。 3.Ce【In_3】は、圧力によりその物性が著しく変化することがしられている。我々は常圧での格子定数と、その90%の場合との二つの格子定数にたいする電子状態の計算を行った。結果から物性の変化の原因として以前考えられていた。Ceの4f状態が圧力でエネルギーが高くなり押し出されるという機構ではなく、4f状態とInのp状態との混成が強くなることが著しい物性の変化の原因であることをたしかめた。62年1月インドのバンガロールで開かれた価数揺動状態に関する国際会議で発表した。 4.Ce【Pd_3】は、不純物による電気抵抗が異常に大きいことが謎とされていた物質である。電子状態の計算の結果この物質の中ではCeの4f状態が極めて狭いバンドを作っており、しかも非常に小さなフェルミ面を持っていることが判明した。このことから上記の謎を自然に解くことができた。
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