研究概要 |
本研究では、日本付近の低気圧・前線周辺に現われるメソスケールのクラウド・クラスターの特徴、特に、出現場所,出現頻度,動き,発達,衰弱の様相,およびその構造を明らかにすることを目的とした。2年間にわたり、気象衛星ひまわりとNOAA(当研究所のNOAA受信システムによりHRPT信号を直接受信),PPIレーダ,RHIレーダ,垂直レーダ,地上雨量計のデータを用いて研究を行った結果、次の成果を得た。1.4〜11月の暖候期、日本周辺(特に、日本南方海上,東支那海,チベット高原の東,華北など)に、直径100km以上のクラウド・クラスターが500個以上観測され、長寿命で大きいものも30個近く見出された。また、出現頻度は約30日の周期の変化を示すと共に、海洋上では夜中から明け方にかけて、大陸上では午後から夕方にかけて現われる傾向にあった。2.低気圧周辺に現われたクラウド・クラスターの事例解析の結果、それらの構造について興味ある結果が得られた。東支那海上で長時間停滞したものは、発達した積乱雲群の集団により構成されていること、既存の群の西側に次々と新しい群が形成されることにより維持されていること、その形成頻度と動きのかね合いによりクラスターが停滞することが見出された。また、低気圧の暖域に現われ、その後温暖前線に近ずいたものについては、その北東部は上層と中層の二層の層状雲により構成されており、クラウド・クラスターが積乱雲の群のみにより構成されているものではないことが示された。3.梅雨前線の雲の変化とクラウド・クラスターの活動とを対応させたところ、南方からの水蒸気輸送の増加に対応して、積乱雲群の出現個数が増加し、それと共に、積乱雲群の集団であるクラウド・クラスターの個数が増加し、これらの変化が梅雨前線の雲頂温度の低い雲の雲量の変化に対応することが見出された。
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