研究概要 |
地球上の全生物種の系統進化関係は、5SrRNAのような進化置換速度の低い情報高分子を相互比較することにより、その大略を明らかにすることができる。当課題では光合成真核生物、とりわけ藻類の分子進化とそのクロロプラストの成立過程に重点をおき研究を進めた。 この2年間を中心に、当研究室でその塩基配列を決定し報告した光合成生物5SrRNAは、下記のように各種にのぼる。クロロフィルaをもつ紅藻類からは、アサクサノリ,シラモ,テングサ,トサカマツ,ナガマツモ,カワモヅクを報告した。クロロフィルa+bを持つ緑藻類や陸上植物からは、コケ4種,シダ類4種,裸子植物3種,車軸藻類のフラスコモ,接合藻類のアオミドロ,緑藻類のアオサ,クラミドモナスである。クロロフィルa+cをもつ褐藻類では、ホンダクラ,カジメ,コンブモドキ,コルダリア,珪藻のハネケイソウ,黄金藻のミズオノリ,クリプト藻のキロモナスである。原生生物界にもクロロフィルa+bを持つミドリムシやクロロフィルaのみを持つシアノフォラがいるが、この細胞質5SrRNAとクロロプラスト5SrRNAを決定した。 これらの5SrRNAの1次配列と、従来より決定されている5SrRNAも含めて、合計総数352種の5SrRNAの配列を相互比較し、相違度を計算することによって、系統関係を明らかにした。 その結果、全生物界における生物系統関係は以下の様になった。まず生物全体はおおきく三つのグループにわかれている。真核生物,後生細菌,真性細菌である。真核生物の内部では、もっとも原始的な真核生物は紅藻類である。藻類は通常、紅藻類,緑藻類,褐藻類の三者に大別されるが、三者の関係は紅藻類,緑藻類,褐藻類の順序で出現している。クロロプラストの成立には複数回の細胞内共生が考えられた。
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