研究概要 |
本研究成果は以下にまとめられる. 1.ヒルギ散布体の植栽実験II:メヒルギ, ヤエヤマヒルギ, オヒルギの散布体を異なる環境(オープンな干潟と林縁部)に植栽して3年間その生長を追跡した. その結果生存率が高いのはヤエマヒルギで, ついでオヒルギ, メヒルギの順となった. 林内に植栽した散布体はすべて消失し, また生育環境によって生長量に差が認められた. また, 3種の生長は夏季に急激に伸長し, 冬季に停滞する生長リズムが見られ, 樹齢に対応した年輪が形成されることが示唆された. 一般に土壌条件(土壌呼吸)良好な立地(オープンな干潟)では生長が良いが, 特にオヒルギは環境に対する耐性が他の2種に比して高いことが明かとなった. 2.マングローブの初期生育段階における現存量と生長様式:年次的に植栽したマングローブの実生・稚樹を採取し, 生長段階に応じて現存量の変化, 地上部と地下部の関係, 光合成系と非光合成系の関係について論じた. この結果からメヒルギは潅木的な傾向を示し, オヒルギは初期段階から広葉樹型の生産構造図を示し, 高木的な性格をもち, ヤエヤマヒルギがその中間的な傾向を示した. 3.マングローブ林の生長リズム:60ヶ月にわたる樹幹の肥大生長を追跡した結果, 年間約3mm程度の肥大生長が見られた. 河口干潟に生育するマヤブシキ林で最も高い生長率を示し, 中流のメヒルギ林においても高い値を示した. このことはオープンな干潟では林内よりも生長が良いことを示している. 樹幹のサイズ毎の肥大生長をみるとマヤプシキ林, 下流のヤエヤマヒルギーオヒルギ林, オヒルギ林では樹幹が小さいほど生長がよいが, 上流側のオヒルギ林では逆の現象が見られた. これは1985年の夏の台風で林冠部が疎になったため高木がギャブを埋めるために盛んに生長しだしたためと考えられる. その他4.西表島マングローブ林の枯損の原因究明:富栄養化によるマングローブの枯死帯を観察した.
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