研究概要 |
光合成の酸素発生能を有する膜標品が種々の材料から単離されているが、これらの標品はクロロフィルを結合した47KDaと43〜40KDaのサブユニットを含む膜内在性の数種のポリペプチド,酸素発生に関与する33,24,18KDaの膜表在性蛋白と集光性色素複合体(集光性クロロフィルa/b蛋白複合体:LHCP,フィコビリン色素蛋白)から構成されている。本研究では、これらの各サブユニットがチラコイド膜内でどのような空間的配置で存在しているか明らかにする目的で、切断可能な2価性試薬による架橋反応と2次元の対角線電気泳動による解析を行い、以下の結果をえた。 1.ホウレンソウから単離した酸素発生標品を最大架橋距離12【A!゜】の切断可能な2価性試薬(dithiobls-succinimidyl propionate)で架橋したところ、(1)酸素発生に関与しMnイオンの安定化に寄与していると考えられている膜表在性蛋白33KDaと光化学系【II】反応中心複合体のクロロフィル結合蛋白47KDaとの架橋、(2)膜表在性蛋白で【Cl^-】や【Ca^(2+)】イオンの安定化に寄与していると考えられている18KDaと24KDaとの架橋、(3)LHCPのアポ蛋白間の架橋、が同定できた。特に、47KDa蛋白が33KDa蛋白と隣接して存在しているという結果は、47KDa蛋白が水の分解系で重要な役割、例えば、Mn結合部位を有する蛋白である可能性を示唆しており興味深い。 2.好熱ラン藻Synechococcusの酸素発生標品を用いて上記と同様に9【A!゜】の最大架橋距離をもつ2価性試薬(dithiobis-succinimidyl glycolate)で架橋したところ、アロフィコチアニンのサブユニットとクロロフィル結合蛋白40KDaとの架橋が同定できた。しかも、40KDa蛋白に結合したアロフィコチアニンには長波長蛍光成分(F-680)が含まれていた。この結果は、40KDa蛋白がフィコビリゾームからの光励起エネルギーを受け取る光化学系【II】反応中心複合体のサブユニットであることを示唆している。
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