研究概要 |
セネデスムスの細胞を-185℃の液体プロパン中で急速凍結し、2%四酸化オスミウムおよび0.1%酢酸ウラニウムを含むアセトン溶液中で(-85℃)、細胞中の氷をアセトンと置換し、スパー樹脂に包理し、超薄切片とした後細胞内小器官の膜構造を電子顕微鏡で観察した。通常のグルタールアルデヒド・オスミウム固定法も凍結置換法と比較のために行った。ゴルジ体のシスターネ膜,葉緑体包膜,チラコイド膜,ミトコンドリア膜はいずれも典型的な単位膜であり、従って通常の化学固定では高電子密度の1枚の膜としてあらわれるが、凍結置換法ではこれらの単位膜はいずれも原則的には3層構造をとる膜としてあらわれた。特にゴルジ体のシスターネ膜と、葉緑体のチラコイド膜が最も典型的であった。3層のうち、中央の層は電子密度は低く、両外側の層は電子密度は高い。アセトン置換中に単位膜を構成するリピッドの2重膜が溶出したあとが中央層であり、リピッド2重膜中に多量うめ込まれていたタンパク粒子だけがあとに残り、見かけ上、中央層をはさみ込む高電子密度の層が形成されたと解釈される。2重の葉緑体包膜の外膜は3層構造であったが、内膜は高電子密度の一重の膜としてあらわれた。これはミトコンドリアの2重の外膜が、並列する3層構造としてはあらわれなかったこととともに例外的な膜の形態であった。恐らく単位膜の2層のリピッドのどちらか1層中にうめ込まれているタンパク粒子が小量の場合は、1層の膜としてしかあらわれないであろうし、これとは逆に、2層のリピッドのいずれの層にも多量のタンパク粒子が含まれる場合には、リピッドが溶出してもその部分はすき間の層としては認め難く、単位膜の3層構造は不明瞭となるのであろう。ミトコンドリアの外膜はこのような状態を反映するように推測される。
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