研究概要 |
1.サナダゴケ属(Plagiothecium)および近縁属の研究. 無性芽, 偽毛葉, 茎の表面の細胞, 仮根の位置, 染色体数, 雌雄性など, 多くの分類学的特徴を比較して, 従来のイチイゴケ属を二つの属に分割する事が適当との結論に達し, 新属Pseudotaxiphyllum Iwats.を提唱した. 関連属を含むすべての種のモノグラフはほぼ完成しており, 近く発表の予定である. 2.サナダゴケ属(Plagiothecium)および関連属の細胞分類学的研究. 今回の野外調査によって収集した生きた資料のほか, 従来から蓄積してきたデータを合わせ, この群の28の分類群の染色体数を明らかにした. 特にm-染色体を詳細に観察し, 染色体数の修正を行なった. その結果, サナダゴケ属の染色体数と核型は各々の節で一定であることがわかった. 3.ヒラツボゴケ属(Glossadelphus)の研究. 内外の研究機関から基準標本を含む多くの資料を借覧し, 研究を行なった. その結果, アジアから記載された41種を14種に整理し, 近く論文として発表の予定である. 4.ラッコゴケ属(Gollania)の分類. 日本産のラッコゴケ属の検索表を発表したほか, アフリカ産の1種を本属から除外した. 5.新属Taxiphyllopsisの設立. 高知県と山口県の石灰岩地域から採集された資料をもとに, 新属の設立を提唱した. 6.蘚類の沈水培養. 分類学的特徴の変異を調べる目的で, ハイゴケ, ウカミカマゴケ, ラッコゴケ, シワラッコゴケ, ヤナギゴケ, ケヘチマゴケ, コバノチョウチンゴケ, ヒメミノゴケなどを水中で培養した. その結果, 識別形質のうち, 水中でも安定した形質と変異の大きい形質があることがわかった. 以上のように蘚苔植物の系統分類に重要な成果を獲たが, 今後さらに他の群についても研究を行なう必要がある.
|