研究概要 |
本研究は、ウニの精巣内生殖細胞の成熟分裂において、細胞分裂極及び鞭毛の育成に重要な関係をもつ中心小体の行動を知る目的で、分離した生殖細胞の培養系において調らべ、次の研究結果を得た。 1.精巣内生殖細胞の分離:生殖期初めの精巣を摘出し、Ca、Mg欠如海水中で細切し、細胞分離液(【10^(-4)】M EDTA-Ca,Mg欠如海水+【10^(-3)】%コラゲナーゼ)へ移し、振盪して各種生殖細胞を遊離した。つぎにナイロン布で瀘過して精巣組織断片を除去し、遊離生殖細胞を分別した後、軽く遠心分離して遊離細胞を集めた。これらの細胞をCa,Mg欠如海水でよく洗った後、5,10,15%フィコール密度勾配遠心分離法で、各種生殖細胞を分画した。その結果、最上層に精細胞、中層に第2精母細胞、下層に第1精母細胞及び精原細胞が集められた。 2.分離細胞の培養:分離した精原細胞、第1及び第2精母細胞を培養液(馬血清,グリシン,グルコース,ゼラチンほかを含んだ滅菌海水)中で培養し、その1部で、核分裂,鞭毛形成,中心小体の行動を透過型及び走査型電顕観察により調らべた。また他の1部で、鞭毛形成と細胞分裂との関係を顕微鏡テレビカメラ・ビデオ装置で録画して調らべた。その結果、培養後約8時間で鞭毛形成が始まり、次第に伸長して約2時間でその伸長は停止した。その直後、鞭毛は細胞内へ吸収され、つづいて細胞分裂がはじまった。鞭毛形成時の核は休止期〜初期前期で、中心小体の複製が鞭毛基部でみられ、鞭毛吸収時には各1対の中心小体は2つの分裂極へそれぞれ移動し、細胞分裂が進行することが観察された。 3.結論:上記結果の他、核分裂毒で細胞分裂を抑制した場合に複数以上の鞭毛が生ずることなどから、中心小体は鞭毛形成に伴い複製され、分裂極となって成熟分裂が進むと結論された。
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