研究概要 |
本研究はキンギョ赤色腫株化細胞が分化誘導によって多様な神経冠起源の表現形質をクローン単位で発現することを利用し細胞分化の機序を解明することを目的としている. 昭和62(最終)年度の研究成果は次の二項目に要約される. (1)メラノソーム形成に関与する因子の解析:キンギョ赤色腫細胞GEM81母株から分化誘導によって得られるメラニン産生性クローンは細胞形態, 色素沈着度, ホルモン反応性及び増殖能などがクローン毎に著るしく異るが同一クローンに帰属する細胞は極めて類似した形状を示す. この知見は赤色腫細胞が産生するメラノソームの微細構造についても明瞭に認められた. メラニン産生性赤色腫細胞のメラノソームの形状は球または楕円状で, 大きさには直径が0.4μm程度で均一なものと, 1μm前後のmacroglobularなものを中心に顕著な変異を示すものとが存在した. 色素沈着にも顕著な差異が認められた. 内部構造には(1)同心円状の層状構造, (2)多数の微小顆粒を含むもの, (3)格子状に配置された微小繊維から構築されるものの三型に大別された. メラノソーム微細構造には上述の如き顕著な差異が認められるにも拘らず同一クローンに属する細胞は極めて類似した性状を示すメラノソームを産生しており, 異なるクローン間でのメラノソーム構築様式の比較はメラノソーム形成に関与する因子の識別・同定に利用できることが明らかになった. (2)神経冠起源標識抗原の探索:キンギョ赤色腫細胞は分化誘導により神経性標識の一つと見做されるS-100蛋白特異抗体に顕著な陽性を示すクローンを派生する(昭和61年度に報告)が, 神経冠起源の標識とし種属を超えたメラノーマ抗原に注目し, この抗原に対する抗体(谷口克博士提供)を利用して検索した. 結果として, 赤色腫細胞は魚類起源であるが, メラニン産生能の有無に拘らずこの抗体に対し陽性反応を示すことが解明された.
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