研究概要 |
魚類の視運動反応(Optokinetic response:OKR)は, 視物体又は視野にある目標が動くとき, これを網膜上に恒常不動に保つように行われる反応で脊椎動物では広く視察されている. 魚類における視運動反応は, 追従運動(following response:FR)と視覚性眼振運動(optokinetic nystagmus:OKN)に大別される. 魚類は脊椎動物の中でも脳は比較的単純で, 実験解析に適していると考えられることから, ウグイとメダカを材料として, 行動生理学と神経生理学の面から視運動反応に関する発達と中枢神経回路網の機構解明を行った. 1.メダカは発育が早く, またその系統と発生に関することが, よくわかっていることから, 孵化後から成魚にいたるまでの視運動に関する発達をビデオを使って記録し, 解析を行った. 成魚でも, 体長は28.5〜36.0mmであることから行動と形態学的解析が容易である. (1)孵化後から約60日迄について, FRから分解視力について調べると, 末梢視覚系の発達は形態的な面からみても分解視力に関係がないことがわかった. (2)FRは孵化後1週以内に, 又55日以降に大きな変化が行動学的な面で観察された. 孵化後1週以内(1〜2日)において追従距離の減少と視覚性刺激に対する反応の減少が現われる. これは末梢の視覚経路の中枢神経系への投射の影響が関与することが考えられる. また55日以降は, 脳内における視覚性眼振運動に関する神経回路網の発達が関与していると思われる. 2.ウグイの視覚性眼振運動に関与する動眼神経核内での単一ニューロンの活動様式を調べた. 又メダカの中枢から細胞外記録により, 56個の視運動性単一ニューロンの活動様式を調べて, 比較検討を行った. ウグイとメダカについて両者の動眼神経核, 中-間脳部位のOKNに関する神経回路は同じであった. メダカの眼振運動に関する神経回路網を本研究では明らかにすることができた.
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