研究概要 |
ホランダイト型化合物の化学式は一般に$$A_x$$$$(M^(3+)M^(2+))_u$$M(^(4+)_(8-u))O_(16)$$(O≦x≦2)で表される。Mは酸素八面体内に位置し、複鎖を形成し、複鎖が4つつながり正方柱の一次元トンネルを形成する。このトンネル内の席は酸素六面体であり、大型の陽イオンA(K,Na,Baなど)が占める。この席は面共有のためイオンの反発力が生じ通常空席を伴っている。そのAイオンの詰まっている割合(100x/2)を充填率と呼んでいる。このAイオンはトンネル内を移動しやすくAイオンの伝導を利用した一次元イオン導伝体,トンネル内への吸着を利用した吸着材,放射性廃棄物であるCsなどの大型陽イオンをトンネル内へ閉じ込めるSYNROCなどへの利用が期待されている。本研究ではこの化合物の物性の基本となるトンネルの理解を深めるために、結晶を合成し、キャラクタリゼーションを行った。初年度は、MイオンにMnを、MイオンにBaの入ったホランダイト($$Ba_x$$$$Mn_8$$$$O_(16)$$)について結晶を合成し、その存在領域及び加熱変化を明らかにした。ホランダイトは天然には存在するが、末だ合成されていなかった。本研究でMn$$O_2$$-BaMn$$O_3$$擬二成分系の相関係を固相反応で調べた結果、1.23<X<1.36,500〜800℃の領域にホランダイト単一相が生成することを明らかにした。示差熱分析(DTA)によりトンネル内のBaの充填率の低いホランダイトは、クリプトメレンと同様その充填率が温度に依存すること、すなわち、充填率の高いもの程高温に安定であることを明らかにした。次年度は、クリプトメロン(Kx$$Mn_8$$$$O_(16)$$)の合成とトンネルからのKの溶出について検討し、Kの充填率とクリプトメレンの分解開始温度の関係を明らかにした。充填率100%のクリプトメレンは、温水中で2週間で約60%まで充填率が低下することを明らかにした。天然のクリプトメレンの充填率は50%近傍のものが多いが、地表水によりカリウムが溶出したものであろう。これらの知見はトンネルを理解する上で重要になるであろう。
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