研究概要 |
韓国及び西南日本の花こう岩質マグマの分化様式を解明するために, これらの地域の花こう岩類の徴量元素含有量を放射化分析によって定量した. 韓国のジュラ紀花こう岩類の全岩REEパターンは日亜紀のものと全く異なる. すなわち, ジュラ紀のREEパターンでは〔Eu〕/〔Eu*〕=1.1〜0.62, (La/Ln)cn=80〜20, ΣREE=100〜180PPmであるが, 白亜紀のREEパターンでは〔Eu〕/〔Eu*〕=1.03〜0.01, (La/Ln)cn=28〜1.2ΣREE=111〜730PPmである. 花こ岩質メルトの結晶化モデルとしてRayleighの分別結晶モデルを用いて計算を行った. モデル計算の結果と白亜紀花こう岩類のREEデーターがよく一致するので, 韓国の白亜紀花こう岩類は主として分別結晶作用によって分化したものと考えられる. 花こう岩類のREEパターンから, 韓国のジュラ紀花こう岩類は古基変成岩類がザクロ石あるいはジルコンを残して部分溶融ma生成したものと考えられる (Tsusue et al, 1987a), 西南日本には北から南に向かって, 山陰帯, 山陽帯, 領家帯及び外帯の四帯が知られている. これらの花こう岩類のREEパターンは韓国の白亜紀花こう岩類のそれと類似している. すなわち, 〔En〕/〔En*〕=1.03〜0.01, (La/Ln)cn=28〜1.2, ΣREE=110〜730PPmである. 先と同様なモデル計算の結果, 西南日本の花こう岩類も主として分別結晶作用によって分化したものと考えられる(Tsusue et al, 1987b) McCarthy and Robb(1978)が示したように, 花こう岩質マグマが分別結晶作用を行う際にどのような鉱物がマグマから晶出するかによって, 液相及び固相のBa,Rb及びSr含有量の関係が変化する. 西南日本の花こう岩類のBa, Rb及びSr含有量は, 初期に花こう岩質メルトから斜長石-石英-黒雲母が晶出し, 後期に斜長石-石英-カリ長石-黒雲母が晶出するようになったモデルとよく一致する.
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