研究概要 |
ヒトの頭髪の毛根部の脂肪酸組成を調べ、年令との関連性を調べた。試料は、抜去した毛髪の毛根部を5〜6mm切り、塩酸メタノール(5%)で加水分解し、ガスクロマトグラフにより脂肪酸の分析を行ない、各ピークはGC-MSにより確認した。試料は、5才〜93才の男女合わせて65例であり、各年令群に分け比較した。毛根部には、ミリスチン酸,パルミチン酸,パルミトオレイン酸,ステアリン酸,オレイン酸,リノール酸,リノレン酸等の脂肪酸の外に、少量の炭素数15,17の奇数酸:微量の炭素数15,16,17,18のiso型の分枝脂肪酸が検出された。これらの脂肪酸組成のパターンは、TypeAと、TypeBの二つのグループに分けられた。TypeAは、圧倒的に飽和脂肪酸が多く、少量の奇数酸、微量のiso型の分枝酸がみられた。TypeBは、不飽和脂肪酸の含量が多く、ほぼ飽和脂肪酸含量と同じであり、ごく微量の奇数酸が存在した。TypeAは、18〜29才の男性に極めて多く、女性のほとんどは、TypeBであった。男性のステアリン酸とパルミチン酸の比について、加令と共に一定の変化を示した。我々は先にヒトの皮脂の脂肪酸組成を調べ、年令との間にある相関があることを見出した。今回の結果は、この結果とは異なるが、毛髪の場合は、毛髪を抜去した時、毛根部の皮脂腺の組織は、硬い表皮層で剥ぎ落されている可能性があり、男性にこの傾向が顕著であり、男性毛根部の情報が皮脂腺と無関係であるとすれば、容認し得る結果である。
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