研究概要 |
高耐圧・高電力・スイッチング用、及び、ダーリントン型npn.Siトランジスタ・チップ(Trチップ)を試料に用い、コレクタ(c)-エミッタ(e)間、又は、C-べース(b)間にバイアス電圧を印加して、電子線超音波顕微鏡(EAM)と走査型電子顕微鏡(SEM)とで、同一場所をその場観察し、EAMを用いてどの様な電子線超音波顕微鏡の像が得られ、深さ方向の観察出来る範囲は何に依り定まるか、更に、半導体素子の評価への応用について研究した。その結果、(1)電子線超音波像(EAI)のコントラストはバイアス電圧に依存して変化する。(2)転位線がb領域からのみ観察され、e領域からはバイアス印加方法の如何(c-e,又は、c-b間印加)に関わらず観察されない。転位線はTrチップの電気特性不良の場合に観察された。この転位線はb層拡散工程での誤操作から製造中にb層に発生したもので、c-e間の耐電圧を低下させた一因であることが分った。以上のことは、(3)EAMが半導体素子評価に応用出来る事を示している。EAMにより観察出来る深さは、SEMの各種モードの像と比較して、(4)EAMがSEMよりも深い領域を観察出来ることが分った。電子線の断続周波数を1MHz、吸収電流を一定、試料にTrチップを用いて観察し、試料表面のAl電極(約6μm厚)の下に埋込れたSi【O_2】層(約2.5μm厚)を加速電圧(HV)が35kV以上の条件で観察することが出来た。(5)EAMの観察深さは、HVと試料物質とで定まるエレクトロン・レンジ(ds)に比例しており、上記の場合、dsの約60%が観察可能であることが分った。(6)電子線の断続周波数を1MHz、試料にSi・Trチップを用いた場合、EAMの分解能は約2.5μm(理論値に近い)を得た。これは試料ホルダ、プリアンプを中心とする信号検出・増中系の改良によるS/Nの向上に依り実現出来たものである。以上の結果は以下に発表した。(Jpn.J.Appl.Phys.25(1986)Suppl.25-1.p194,ibid Suppl.26-1,to be published)
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