研究概要 |
研究は数値流体力学を用いて行なわれた。AOTVの地球大気突入速度であるマッハ数M=25.2で、半球プラス円筒形状の宇宙飛行体(宇宙船の先端はこれにより近似される)が、高度70kmに達した場合を解析の目標にした。考慮した化学物理現象は(1)酸素分子,窒素分子の解離と再結合、原子と分子間反応の中でせいぜい3個のみ,(2)各化学種の生成エンタルピー(即ち反応による熱生成と解離による吸熱),(3)流体の圧縮性,(4)高温ガスからの線,帯ふく射(各種のブロードニングを考慮し、存在する化学種の回転,振動,電子励起,解離準位間の平衡及び非平衡ふく射が基本的には計算される)である。比熱は一定と仮定された。 基礎式オイラー方程式で、数値解法として用いられたのは(a)Beam-WarmingプラスShock Fitting,(b)Beam-WarmingプラスShockCapturingの2方法であった。局所時間ステップにより大幅に計算時間が短縮され、2次と4次の人工粘性係数を調節することにより、方法(b)においても衝撃波の取扱いが十分出来る事が明らかにされた。方法(a)は衝撃波を完全な不連続面として与えるので、stiffな化学反応に適している。 得られた結果を並べると、(イ)衝撃波離脱距離はこれまでの理論解析や実験と一致した、(ロ)衝撃波前後のランキンユゴニオ式は正しく満たされた、(ハ)理想気体の解に比べて、衝撃波背後の温度が低い現実的な解が得られた、(ニ)酸素の解離は衝撃波と物体頭部間で化学平衡に達するが、窒素の解離は尚非平衡である事がわかった、(ホ)ふく射を行なう化学種として考えられているのはNOのみであるが、その熱伝達への寄与は対流よりもはるかに大きい。
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