研究概要 |
昭和58年7月、ブラジルの河川に建設された流水せき止め用の大形のテンタ・ゲートが新しいタイプの激しい自励振動を引き起こし、その原因解明が急がれている。筆者が西独国カールスルーエ大学水力学研究所で行った基礎実験によると、ブラジルで発生した振動問題は、放水流が水没しているために発生する流出渦と構造物の振動とがお互いに連成し合った新しいタイプの振動問題であることが明らかになった。このような流体関連振動問題に有効な解析手法を確立するために、本年度は、時にゲートの上下方向の振動問題に関するモデルゲートを製作し、(1)放水流出渦、特にゲート直下の放水剪断層の動的な挙動と、(2)自励振動が発生する条件等を明らかにした。 研究成果は以下のとおりである。 (1)ゲートが上下に振動すると放水剪断層も上下に振動する。その挙動は放水口開度とゲートの幅との比が約1.0よりも大きいときに激しくなる。放水剪断流れを可視化し、それを高速度カメラで解析した結果、放水剪断層の上下動はゲートの上下動よりも遅れて生じることが明らかになった。このためにゲートの下端面と放水剪断層との間(死水域とも呼ばれる)に大きな圧力の変化が生じ、それがゲートの上下方向の振動を引起こしている。 (2)ゲートの上下動を決定する基本的なパラメータの一つが、平均放水流速,ゲートの幅,振動周波数から決まる誘起速度であることが明らかになった。誘起速度が約10よりも大きいとき、自励振動が生じ、その発振比は比較的大きい0.07にも達する。 実用されているテンタ・ゲート実地調査の一環として、穴内川ダム(高知県所在)の一脚式テンタ・ゲートについてモーダル解析を行った。構造振動の固有振動数は9.1Hz,20.8Hz,31.0Hz,50.1Hz,それらに対応する減衰比は0.064,0.002,0.008,0.006であった。
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