研究概要 |
電力系統の運用において近い将来重要な役割を担うと考えられる総合セキュリティ監視制御システムの完成を最終目標として, その主要な構成要素のうち基本的考え方やアルゴリズムがまだ十分に確立されていない機能について, 順次アルゴリズムの開発を行ってきた. 以下に本研究で得られた主要な成果を列挙する. 1. オンライン想定事故解析機能について 送電線路, 発電機, 負荷等が事故を起こした場合を想定して, 母線電圧の大きさ, 位相角, 線路潮流等を高速かつ高精度に求める手法を確立した. 開発された手法は, PQ分離高速潮流計算の1/3以下の計算時間で電圧の大きさや位相角が算出でき, またその精度は, 電圧の大きさで1%未満, 位相角で1度未満の水準である. 2. 予防制御方策の決定機能について 線路過負荷と母線電圧の異常をセキュリティ指標として定義して, これに定常運用時の経済性を加味した評価関数をP, Q各副問題において最小化するような最適制御方策の決定手法を開発した. 3. 個別緊急制御方策の決定について 緊急制御方策の決定問題を, より実情に即した方策が得られるように, 制御変数自体の特性を安定化に反映させ, 非線形最適化問題として解く手法を開発した. すなわち, P問題では, 制御が修了するまでの制御時間を最小化すること, Q問題では, 調整すべき制御変数の個数をなるべく少なくすることに重点をおいた定式化を行い, これら2つの副問題を繰り返し最適化することにより原問題の最適解を求める. 4. オンラインデータ収集機能の最適化・高信頼度化について, 状態推定器の最適化と性能評価を行い, 特に動的状態推定手法の精度が静的状態推定よりも3倍程度高いことを明らかにした. また, 状態推定・データ収集システムの可観測性の他に, これまであまり明確にされていなかった, 誤りデータの可検出性および可同定性の概念を明らかにし, 最適観測器配置の基礎を固めた.
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