研究概要 |
近年、交流損失測定の標準化が提案されている。交流損失の測定は大別すると熱的測定と電気的測定にわけられる。熱的測定としては主に蒸発ヘリウムガスの測定が行なわれている。電気的測定としては主に磁化測定が行なわれている。本研究で行なう交流損失の測定は単層コイルに交流電流を通電し、コイル電圧を測定し交流損失を求める比較的簡便な測定方法である。ツイストされた超電導多芯線による単層コイルに交流電流を通電した場合の交流損失の測定は行なわれていない。本研究ではツイストされた、銅コアをもつ超電導多芯線を用いて、コイル長(L)トコイル径(D)の比(L/D)の異なる4個の単層コイルを作製した。交流電流を通電し、交流損失を測定し、単位長当りに換算した交流損失(q)を求めた。以下のことが明らかとなった (1)単位長当りのコイル巻数(n)とコイル通電電流(I)の積(n,I)が10600A/mの場合、(L/D)が2.85,1.99,1.30,0.794の4個のコイルの交流損失(q)の周波数依存性は同じで、その大きさの比は1:0.93:0.82:0.67であり、(L/D)が小さいほど小さい。 (2)(n,I)が44200A/m、61900A/mの場合、(L/D)が2.85のコイルの交流損失(q)をqmとして、(L/D)が1.99,1.30,0.794のコイルの交流損失(q)を規格化したq/qmが周波数の増加によりわずかながら増加していくのが見られた。この傾向は(n,I)が61900A/mの場合の方が大きく、また(L/D)が小さいほど大きかった。 (3)(n,I)が61900A/m、周波数が17Hzまでの測定範囲において、4個のコイルの交流損失(q)の相対的大きさはほぼ同じであることが見られた。
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