研究概要 |
今までの波浪エネルギーの取得には自然のままの波を利用しているが, ここではエネルギーを取得し易い形に波を制御することを試みる. この目的のために波浪に対して周波数フィルターとして作用する構造物を考える. まず標準構造物として方形断面水路を考え, 波の解析に用いられるNavier Stokesの式と連続の式中の圧力を電圧に, 流速を電流に対応させて, 重力波に対する等価回路を求めた. この結果, 浅水波の場合は無限の平行平面導体間を伝搬するTE,TM電磁波と同様で, 基本的にはハイパス特性, 伝送域ではバンドパス特性をもつことが分かった. さらに, 深水波の場合の等価回路もえられ, およその定性的特性は浅水波の場合と同じであるが, 周波数依存性は全く異る. 浅水波の等価回路については今までにいくらかの研究があるが, 深水波の場合は, 本研究で始めて明らかにされた. 上記のN-S式および連続の式から直接えられる等価回路は媒質の単位体積当りの, いわゆる等価回路密度で, 与えられた構造寸法全体についてのものではない. 本研究では任意の寸法について浅水波, 深水波に対する等価回路を解析する手法を示した. また, 理論的解析結果を検証するために水槽による模型実験を行った. 任意の方形断面開口水路の等価回路がえられると, 所要の周波数特性をもつフィルターは分布定数線路, μ波導波管による電波フィルターの構成法を適用して設計される. 本研究の波浪フィルターは, 波浪エネルギーの取得を目的として考えられたが, 波浪フィルターは広く一般の目的に沿う波の制御に利用できる. 例えば, 海水, 魚類, 生活汚水, 船舶などは自由に出入でき, しかも外洋からの波の進入を防ぐような, 従来とは全く異る形式の港を造ることも可能となる.
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