研究概要 |
3年間の研究期間において石川工業高専を基地とする冬季雷の観測システムが完成し, この地域におけるきめこまかい雷放電特性の観測が可能となった. また, 落雷事故との相関については主として電力設備に対するものを調査, 検討した. 本研究で得られた主な成果は次のようにまとめられる. 1.針端コロナ電流の測定波形におけるパルス成分が雷撃放電と密接に対応していることから, このパルス数を集計して当地域の雷発生頻度を明らかにした. 従来から耐雷設計に適用されている年間雷雨日数(IKL)と比較した結果, ここで得た冬季の値は年間の約74%に相当し, 冬季と他の季節との相違が顕著であり今後IKL値を見直す資料となることを指摘した. 2.VTRによる雷放電路の観測を行い, 多地点同時雷撃, 上向き枝分かれの放電路, 雲底を水平に進展する放電路など冬季雷の特徴をビデオ画像から明らかにした. 特に, 3台のビデオカメラで同時刻に得られた画像を検討したところ, 9地点に及ぶ同時雷撃と推定される放電路が明らかとなった. このような多地点同時雷撃は極端に高い構造物の無い平地への雷撃としては貴重な例であり, 冬季の地上電界が極めて高いことによると推察された. 3.VTRから雷放電路が明らかな18例については, 雷鳴の到達時間と画像から得られる方角とによる簡易的手法を用いて雷撃地点を推定し, この地域の雷撃点マップを初めて作成した. このマップは落雷事故を検討する上で有効な資料となった. 4.雷撃点マップから配電線系統の雷害事故との相関を検討するために, 地元の代表的な配電線を3フィーダ抽出して, 近傍雷撃時における零相電圧, 零相電流のそれぞれの波形を測定した. 各配電線と雷撃地点との離隔距離によって様相の異なる零相電流波形が得られたが, 詳細な相関についての解析は今後の課題として残った.
|