研究概要 |
結晶性高分子の高次構造は非常に複雑で, 分子構造が簡単なポリエチレン(PE)でも球晶が三次元に配列していることから, 高次構造と絶縁破壊の強さ(Eb)の関係は不明な点が多い. このため, 本研究は溶液法で作成したPE薄膜を熱処理することによって大きな二次元球晶が生成し, 自己回復性破壊の手法で絶縁破壊を行い, 高次構造とEbを検討したものである. 通常使用されているPEを絶縁破壊するとき, 電極間に球晶とその境界が直列に存在しているのに対し, 二次元球晶をもつPEでは, 電極間にそれらが並列に存在していて, 絶縁破壊の実験と同時に光学顕微鏡で, その破壊形態を観察することができる. また自己回復性破壊は同一試料で多数回絶縁破壊ができることから, 同一試料によって異なった測定条件での絶縁破壊を行うことができる. 以上のような二次元球晶の利点および自己回復性破壊の利点を十分に活用し, 球晶並びに球晶境界がEbに与える影響について詳細に検討した結果, 以下のことが判明した. 1.球晶境界のEbは球晶のそれよりも低い. 2.添加剤を加えることによって, 一つは弱点である球晶境界に対して充填剤のように働いてEbを向上させる. 他の一つは増刻剤のように働いて球晶境界のEbを向上させるタイプがあることが判った. 3.PE薄膜をオゾン酸化すると球晶も酸化するが球晶境界での酸化の効果が大きく薄膜のEbを大きくする. 4.さらに針-蒸着電極によって上記1.〜3.の試料のEbを球晶および球晶境界に針を選択的に置いて測定し, ワイブル分布によって整理して検討した.
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