二重絶縁形ZnS系薄膜EL素子において、発光層を各々発光色の異なる二層とし、かつこれらの発光層の間に他の材料より成る中間層(ゲート層)を入れて積層した構造の素子を作製しその発光特性について研究した。以下にその結果を述べる。 (1)中間層の膜厚がその材料によって決まるある最適値範囲内にあるときこの素子は可変色性を示す。すなわち二種の発光層の発光色の間で、素子の駆動電圧、駆動周波数によってその発光色が連続的に変化する。中間層膜厚が最的値範囲外のときには、このような可変色性は示さず、単に両発光層が発光するだけか、あるいは一方の発光層のみが発光するのみである。 (2)上記の中間層の最適膜厚範囲は、おおむね中間層が金属の場合10A〜60A、絶縁体の場合500A〜1000Aであった。半導体の場合は材料によってかなり異なるが一般的に最適膜厚範囲が前2者に比してかなり広く、例えば【WO_3】の場合200A〜3000Aであった。さらにこの最適膜厚範囲は各発光層の膜厚にはよらない。また発光層にドープする不純物の種類にもよらない。 (3)可変色特性の素子駆動条件依存性は、金属の場合と絶縁体及び半導体の場合とで異なり、お互いに逆の特性を示す。 (4)低温(約-100℃)においても、素子の可変色性は維持される。また駆動条件への依存性も変わらず、室温の場合と同様であった。ただしドープする不純物によってはその発光層自信の発光スペクトルが室温における場合とは異なる事、および駆動電圧によってわずかにスペクトルがシフトすることが見いだされた。 (5)以上の実験結果から、この素子の可変色性は中間層における電荷の蓄積、放出が主因であると考えられる。さらに詳細な機構の解明は今後の課題である。
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