研究概要 |
通信規約(プロトコル)を記述する計算機言語として, 有限状態オートマトンモデルに基づくものと, 時間順序関係を中心とした記述法(時間論理)に基づく計算機言語とが検討されている. 本研究は, 後者の時間論理に基づく言語を対象としたものであるが, その言語の効用を評価するために, 有限状態オートマトンモデルに基づく言語についても検討を加えている. 第一年次並びに第二年次には, 両方式の言語の「論理仕様」と「言語仕様」とを完成させ, さらにこれら言語をOSIのトランスポートプロトコルに具体的に適用し, その記述性の裏付けを得ている. 最終年次である第三年次には, 以上の成果を受けて, 言語仕様のコンパイラと実行時の処理系を司るシステム設計に関する検討を実施した. 先づ有限状態オートマトンに従った言語にはPASCAL言語の体系を準用しているが, プロトコルデータの記述等に用いる抽象形データの動的処理に関し拡張が図られ, またプロセスの動的な発生と消滅についても配慮されている. 一方, 時間論理に基づく言語に対しても, 動的な変数処理方式, 並列処理記述に関する拡張と実行時処理に係わる基本設計を行った. さらにこれらの検討の後に, 時間論理に基づく言語の論理的完備性(フォーマリティ)に着目し, プロトコルを実現した製品がプロトコル規定に正確に準拠するかを検査する適合性検証のための検査系列を導出することが可能であることを確認した. この実証のために, 検査系列導出を模擬し, 導出結果の妥当性を確認すると共に, 系列自体も提案した言語仕様により記述できるという一環性を提示した. この点に於て, 本研究が対象とした時間論理に基づく言語に優位性があると結論付けている. 尚本研究は, 3ヶ年にわたって, 国外の研究者と交流しつつ実施され, その成果が国際標準化検討に反映された.
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