研究概要 |
従来の超音波断層法の分解能を上げ、高品質な映像を実現するために、映像系を逆回折問題と見なし、ほぼ厳密な解を求め、それを映像化することを考えた。一般には、このようにすると、多重積分を数値的に計算することになり、実用的な時間の範囲以内で映像を得ることが困難になる。しかしながら、単にボルン近似を仮定するだけで、解が空間的なフーリエ変換と逆変換とで求められることを示すことができた。すなわち、数値計算の問題としては、高速フーリエ変換(FFT)を用いて、きわめて高速な処理が可能な方法を導くことができた。 この理論の妥当性を数値シミュレーションと簡単な水槽実験とで確かめ、結果を昭和60年10月に米国サンフランシスコで開催された国際会議Ultrasonic Symposiumとその直後、東京で行われた超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウムとで発表した。その後、実験装置を整備し、金属ブロックにあけられた穴を対象とする実験を行った。映像はオシロスコープのブラウン管を利用して表示できるようになった。この結果は、昭和61年4月に東京で開催された国際会議 International Conference of Acoustics,Speech,and Signal Processingとその直後、やはり東京で開催された超音波研究会ではっぴょうした。 副次的な成果ではあるが、実験に際して、FFTの効率をさらに向上させる必要を痛感し、Pruned FFTを思いついた。また、実験装置における、超音波振動子の走査機構の微少な変動が問題になることから、その測定法を考え、実行した。これらは2編のshort paperとしてIEEEのTransaction ASSPの1986年8月号にどちらも掲載された。 しかし、金属と外界との境界における超音波のモード変換や漏洩表面波の問題は今後の課題として残されている。
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