研究概要 |
本研究では、アコースティック・エミッション(AE)法と境界要素法(BEM)による実験,解析両面の成果を基にして、ひびわれの発生,進展機構の解明とその制御について検討を行ったものである。初年度のひびわれの発生機構の解明のための線形破壊力学の適用に関する研究にひき続き、ひびわれの診断法ならびに制御方法について検討し、以下のような成果を得た。 1.コンクリートの破壊靭性試験において、AE頻発時の荷重値を用いてBEMによる数値解析を行い、限界応力拡大係数【K_(IC)】を決定する手法を提案した。そして、これがひびわれの発生基準を示す物性値として有望であることを示した。 2.AE波形と弾性波動理論の関係を明らかにし、その成果に基づいてひびわれの発生位置,発生モード,伝播方向などの決定が可能となるAE波形分析法を提案するにいたった。 3.AE法に関する研究成果をふまえて、ひびわれの診断手法を検討し、新たに2つの研究項目を加えて総合的な診断法を提案するにいたった。それは、上述の1.,2.の他に、超音波スペクトロスコピーの概念をAE計測に適用したものと実在構造物のコア供試体のAE発生特性を含んでいる。 4.コンクリート構造物の供用時におけるひびわれ制御には、ひびわれ診断法が有効であるが、設計でのひびわれ制御も必要である。そこで、RC部材のひびわれ幅と設計における算定式との関係を実験的に検討した。その結果、CEB-FIPおよび限界状態設計法などのいずれの算定式によっても、ひびわれ幅を制御しうることが確認された。
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