研究概要 |
本研究は、長大な上構造物のモデル化に適するドラム型遠心力載荷装置を我国で初めて試作し、その実験手法を確立するとともに、河川堤防の破壊現象を模型実験によって再現し、堤防の破壊メカニズムを明らかにせんとして行われたものである。本研究の成果は、次の4点に要約される。 1.我国で初めてドラム型遠心力載荷装置を試作し、昭和62年2月末現在まで1071時間の安全運転の実積を作り、土質工学分野における新しい実験手法として確立させた。本装置の諸元は、ドラム直径が0.8m,幅0.3m,深さ0.1mで、最大遠心力加速度は150gである。プロトタイプに換算すると、長さ377m,幅45m,深さ15mの地盤のモデル化が可能である。 2.ドラム内部に正規圧密粘土地盤、締め固め粘性土地盤の作成方法を確立し、土壌造物と相対速度をもつ水流の発生方法を開発した。 3.河川堤防の洪水時の破壊現象を再現させることに成功した。観察された破壊は次の通りである。洪水流の水位上昇に伴い、堤外法面に洗掘が生じ、その箇所から、ハイドラウリックフラクチャーにより堤内にパイプ流が発生し、堤内法面から漏水が開始する。堤内法面からの土粒子の流亡に伴いパイプは、漸次その径を拡大していく。堤体を構成する土の強度が大きいと、パイプの径は拡大しても、堤防全体は安定しているが漏水量は急増する。土の強度が弱いと、パイプの径がある大きさで天端が安定を失い破堤へとつながる。土が粘着力を有しない砂質土である場合、パイプはセルフヒーリングにより閉塞されて拡大せず、堤内法面からの土の流亡が拡大していく形式となる。洗掘の開始点としては、河川工作物と堤防の接合点,堤防の土性の変化点となる。
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