研究概要 |
1 本研究は医療の中でも特にサービスの緊急性が求められる救急医療に着目し, 施設配置の適正化を図るための計画手法検討を目的としている. (1)患者の移動条件を考慮した最適配置検討をシステムを開発する. (2)熊本県を事例として救急医療需要の特性や需要発生量を把握する. (3)救急医療サービス体制整備計画の指針を捉る. 2 救急医療の拠点的な役割を果たしている2つの医療機関について4ケ月間それぞれ約6000人分の患者の特性を探る特性施設調査と, 一週間に亘り熊本市内の全医療機関について全救急患者の特性を探る時間断面調査の2つの調査を行い, 救急医療需要の特性や需要発生量を検討した. 配置計画の基礎になる救急医療需要, 特に時間外における患者の受診行動の分析事例が少なく, 本研究では特にこの点にエネルギーを注いだ. 3 熊本県内の主要道路網や国勢調査の調査区別情報のデータベースを構築する一方, ネットワーク解析を応用して患者の施設アクセシビリティや施設の最適配置を検討するシステムを構築した. システムを用いて, 熊本県内各地から2つの高次救急医療サービス拠点までの等時間帯図を作成し, 県南地区, 天草地区に新らたな拠点が必要なことを示した. 4 これまで解析に手間がかかり過ぎ応用が難しいとされていた最適配置問題についても, 初めて近似解法の有効性を確かめたのはもとより, 時間外患者の大半が呼吸器系・内科系の軽症者で占められていることを示したり, また, 患者の「スクリーニングシステム」導入を提案するなど, 幾つかの成果を得た. 5 これら3年間の研究成果を総括すると共に, 既発表の論文を収録して, 報告書を作成した.
|