研究概要 |
中和殿物としての水酸化亜鉛と石膏を浮選法を用いて分離、回収する目的で、まず水酸化亜鉛の単独試料について、ドデシルアンモニウムアセテート(DAA)およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の各捕収剤を用いて浮遊性を調べた。その結果、水酸化亜鉛はPH7〜12の範囲で、これらいずれの捕収剤を用いても総じて浮き易いことを認めた。石膏も同じように、これらの捕収剤で比較的浮きやすいので、両殿物の相互分離には抑制剤の併用が必要であると判断された。そこで抑制剤として殿粉とケイ酸ナトリウムをとり上げ、その効果を調べた。その結果、DAA-殿粉の組合せで両殿物のある程度の分離が、また、SDS-ケイ酸ナトリウムの組合せで、両殿物の効果的な分離が期待できることがわかった。 以上の経過から、有望と考えられる上記二つの方法について、水酸化亜鉛と石膏の混合試料に対し、その分離性を調べた。その結果、SDS-ケイ酸ナトリウムの組合せ方式は混合試料の分離にきわめて有効であることを認めた。さらに【Zn^(2+)】1000mg/l,【SO4^(2-)】7328mg/l,【Ca^(2+)】603mg/l,PH5.0の組成の合成鉱水試料を、消石灰でPH8.5まで中和してえられる中和殿物を対象に、殿物相互の分離性を検討した。その結果、SDS-ケイ酸ナトリウムの組合せ方式は、ケイ酸ナトリウムを中和前段で添加するときに効果的であり、とくに、中和前段のほかに浮選段階でも加える二段階添加方式が一層有効であることを認めた。すなわち、ケイ酸ナトリウムの中和前段の濃度290mg/l,浮選段階の濃度145mg/l,SDSの濃度29mg/l,浮選PH8.5の条件で、石膏のほぼ90%がフロスとして回収され、亜鉛殿物の混入は13%に抑えることができた。。換言すれば亜鉛殿物は87%が尾液中に回収されたことになる。この結果は、粗選分離として一応満足すべき成績であると判断された。
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