研究概要 |
当研究代表者らは、1982年に、NiTi化合物が高エネルギー電子照射によりアモルファス化することを見出した。このような、高エネルギー電子照射による金属間化合物の結晶→非晶質遷移がどの程度普遍性のある現象であるのかを確かめる目的で、遷移金属同志から成る19種類の化合物ならびにアルミニウム(Al)亡遷移金属(T)から成る35種類の化合物を試料として選び、それらの電子照射によるアモルファス化の難易度を超高圧電子顕微鏡法によって系統的に調べた。得られた結果は以下のとおりである。 1.160Kにおける2MeV電子照射によって、19種類の遷移金属同志の化合物のなかで、【Co_2】Ti,Cu【Ti_2】,【Cu_4】【Ti_3】,【Cu_3】【Ti_2】,CuTi,CuZr,【Cu_(10)】【Zr_7】,【Fe_2】Ti,【Mn_2】Ti,MoNi,【Nb_7】【Ni_6】,NiTi,Ni【Ti_2】,【Zr_2】Niの14種類の化合物が非晶質化した。一方、CoTi,【Cr_2】Ti,【Cu_4】Ti,FeTi,【Ni_3】Tiはこの実験条件下では結晶を保持した。 2.35種類のAl-T系化合物のなかでは、【Al_(10)】V,【Al_(45)】【V_7】,【Al_(23)】【V_4】,【Al_7】Cr,【Al_5】Cr,【Al_4】Cr,【Al_6】Mn,【Al_4】Mn,【Al_3】Fe,【Al_9】【Co_2】,【Al_2】Zr,【Al_3】【Zr_2】,AlZr,【Al_4】【Zr_5】,【Al_3】【Zr_4】,【Al_2】【Zr_3】,の計16種類の化合物において結晶→非晶質遷移が認められた。 3.これらの観察は、電子照射による金属間化合物の非晶質化が、遷移金属同志の化合物に限られず、一般の金属間化合物においても生じうる普遍性の高い現象であることを示している。 4.これらの電子照射によって非晶質化する金属間化合物は、いずれも、それらの組成が当該二元合金系で液体急冷法や気相急冷法によってアモルファスや準結晶が生成される組成範囲とほぼ一致する特徴を有する。」5.以上により、金属間化合物の電子照射誘走結晶→非晶質遷移には、既に明らかにした照射温度や化学量論組成からのずれ等の因子に加えて、各化合物を構成する原子の化学種の組み合わせとその状態図上での位置が一つの重要な因子であることが判明した。
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