研究概要 |
複合体にとって複合材とマトリックスとの間の濡れ性は重要である。従来固液間の濡れ性は主として静滴法における固液間接触角θにより評価されて来た。しかし、Alのように酸素との親和力が大きい金属では表面に酸化物が存在し、正確なθの値をうることは難しい。 そこで本研究では表面張力の影響がない浸漬法、すなわち複合材SiCあるいは黒鉛を1173〜1373Kの溶融アルミニウムあるいはアルミニウム合金中に浸漬し、浸漬試料表面への金属付着状況から濡れ性を評価した。その結果、SiCあるいは黒鉛と溶融アルミニウムあるいはアルミニウム合金系すべてについて、濡れ過程初期に誘導期τが存在することが明らかとなった。その長さτの値はSiC系では【IV】a,【V】aおよび【VI】a族元素,黒鉛系では【IV】aおよび【V】a族元素の添加により短縮され濡れ性が向上した。以上の濡れ過程は濡れのための核生成速度の立場から解析することができた。得られた総括速度定数KoはSiC系では【IV】a,【V】aおよび【VI】a族元素,黒鉛系では【IV】aおよび【V】a族元素の合金添加により大きくなり濡れ性は向上するとみなすことができた。またSiC系では純アルミニウム,Al-Ti,Al-【V】,Al-Zr系について求めた括性化エネルギーは327〜330KJ/molとなり、Si-C単結合エネルギー290KJ/molにほぼ対応し、黒鉛系では、純アルミニウム、Al-Ti,Al-【V】,Al-Mg系において365〜390KJ/molとなり、炭素の単結合エネルギー348KJ/molに近く、濡れ過程はSiCあるいは黒鉛の分解過程に支配されていると思われる。さらに得られたKoおよびτの値アルミニウムへの添加元素の原子番号に対して周期性を示し、溶鉄中炭素溶解度と原子番号の関係に類似することが明らかになった。溶鉄中炭素活量に関する相互作用母係数から推定したアルミニウム中炭素に関する相互作用母係数と関係づけることができた。
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