研究概要 |
合金の靭性などの飛躍的な改善をはかるためには, 微細な等軸晶層凝固のインゴットをつくる必要がある. そのためには工学適に応用性のある等軸晶の生成機構を明らかにすることが重要なことである. 本研究は鋳造条件の選定によって等軸晶の生成を積極的にうながすあらたな要因を見い出したので, その要因を効果的にする条件をさらに積極的に進め, 等軸晶の生成領域および粒子径の広範な制御方法を確立して, 整粒性に高い微視適等軸晶凝固材を得ることに成功したものであり, その概要をのべる. (1)柱状晶から微細等軸晶に遷移するには, 柱状晶の拡散成長する速度が大きいことが重要となる. その際柱状晶成長先端は鋭角となり, 液相中を突き進んでいく. 温度分布から見て, 高温側の液相に侵入するため, 結晶成長の駆動力となる過冷度は急速に減少し, 結晶成長界面も鈍角となり, 界面での溶質濃化と相まって, 結晶成長速度は急激にブレーキがかかることになる. その間, 結晶成長前面の液相は新たな結晶生成を行なう機会を失して(結晶生成に必要な潜伏期間を消化できないため), 常にクリーン状態となる. しかし, 結晶成長が停滞するにおよんで, はじめて新たな結晶生成の機会が結晶先端から前面の液相に生ずる. それは急速な界面での溶質濃化による凝固点降下と液相内部の温度が降下して, 新たな結晶生成の領域を拡大して, 等軸晶生成の安定性を高める条件を生むことになる. (2), (イ)(1)の柱状晶から等軸晶に遷移する際の新たな結晶生成を促進する具体的な鋳造方法としては, 例えば実験室適には肉厚の薄い黒鉛鋳型を用いることが有効となる. (ロ)また複合鋳込み方法を用いる. 例えば一次溶湯としてAl-3mass%Si合金を重量適にも主体的に鋳込み, 柱状晶成長が減速した段階で純Alを少量鋳込むことによって内部液相の凝固点を高め, 等軸晶生成にはずみをつけてやることが有効である.
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