研究概要 |
最終的に挙げられた成果を二分野に分類して以下のように示すことができる. 1.銅基形状記憶合金の記憶性能の劣化は, マルテンサイト相の母相への変態が困難になることから生ずる. この機相として三種の仮説が提案されている. 即ち(1)M-母相界面の固着(2)M相の分離反応による(3)M相内の長範囲規則度の低下である. 本研究では上記(3)の仮説について, はじめて定量的な確認を与えることができたものである. 長範囲規則度の低下によって形状記憶能も失われること, 規則度の低下は予備時効に大きく影響されること, さらに, M相は二年余りにわたる常温時効によっては独立の規則配列を取ろうとはしないこと等が明らかになった. この分野の研究にこれら成果が寄与するところがあったと判断される. 2.自動車業界の要望する性能を持つ七元銅基形状記憶合金の開発については, 研究代表者の開発したシンポレックス法なる合金探索法を採用して行った. バネの作動温度85°C繰返しひずみ1%を負荷して合金性能を評価しつつ合金探索を行った. 得られた最高の性能を示す材料は, Cu-12.99Zu-12.26Al-2.95Si-1.34Sn-0.79Mn-0.64Niで三才回の熱くり返しで0.7%の形状記憶ひずみを持ったものであった. 変態点の変動は数度以下である. これを自動車業界に報告する予定である.
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