研究概要 |
1.目的:金属-水素系の基礎研究としてPd2元固溶合金中の水素の平衡溶解に関する熱力学的研究を行なった. 特に無限希薄溶体における水素の相対部分モルエンタルピー, エントロピーおよび水素化物生成(解離)の標準自由エネルギー変化ならびに水素固溶限形成の自由エネルギー変化など熱力学諸量を検討した. 2.方法:所定組成のPd-B, Pd-Y, Pd-NiおよびPd-V合金試料の作製はアルゴン雰囲気下でアーク溶解法で行なった. 均質化焼純後, 厚さ約100μmに圧延し, 次いで歪取焼純後, Sieverts型装置で水素溶解のP(圧力)-C(組成)-T(温度)曲線を測定した. 3.結果:Pd-B, Pd-Y合金のように溶媒原子Pdに対する溶質原子の濃度と共に固溶合金のモル体積が増加する合金は水素の無限希薄溶体の相対部分モルエンタルピーΔH_H^°値は減少し, 水素溶解はより発熱反応となることがわかった. この結果は固溶合金の体積弾性率が関与する格子間の"弾性相互作用効果"が水素溶解に対して支配的に作用していることを示している. 一方, 無限希薄溶体の水素の相対部分モルエントロピーΔS_H^°値は固溶合金の体積の膨張, 収縮に拘らず, 水素の侵入溶解サイトが6個のPd原子のみからなる八面体空隙であると仮定すれば説明できることを示した. つまりΔS_H^°値は溶質原子の添加によってRln(1-Xu)^6だけ変化することに相当している. ここでR:気体定数, Xu:溶質原子の原子分率. 各種Pd2元合金中の水素の過剰化学ポテンシャルに関連する見掛けのH-H間の相互作用エネルギーg_1, および水素化物β相の標準生成エンタルピー変化Δ〓, そのエントロピー変化ΔSplat^°ならびに水素固溶限形成の自由エネルギー変化ΔG〓値に及ぼす溶質原子濃度の影響が検討された.
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