研究概要 |
超急冷凝固法(RS法)と粉末冶金法(P/M法)を利用した高力アルミニウム合金の研究開発は、高強度・高耐熱性や低密度・高弾性など従来のアルミニウム合金で弱点とされてきた点を大幅に改善するものとして注目を集めているが、RS粉末の表面に形成される酸化皮膜は一般に弾性に富むため、単なるHIP成型でNear Net Shepeに作り上げることが困難で、押出,鍛造などの高い塑性加工度の加工が必要であり、この問題が重要になっている。本研究では焦点を表面酸化皮膜の挙動の解明にあてゝ、耐熱合金としてAl-Cr-Zr系をまた低密度・高弾性合金としてAl-Li-Zr合金を単ロール法を用いて、雰囲気を実験室における空気中と、乾燥アルゴン・ガス中の2通りの条件下でRS粉末(テープ)を調製した。まずas-splatテープについてそれらのミクロ組織を光学顕微鏡(OM),走査型(SEM)および透過型電子顕微鏡で調べ、また析出相の同定はX線,制限視野電子線回折(SAD)で調べた。合金系,合金濃度,RS条件によって、ほゞ完全なmicrocrystalline組織,セル組織,第2相粒子分散組織が得られた。これらのテープを高温加圧成型,押出で線材を調製した。これらについてまず、OM,SEM,TEMによって表面酸化皮膜の破壊と分散状態を調べた。空気中調製RSテープとアルゴン中RSテープの間には明瞭な差異が認められ、特にAl-Cr-Zr系とAl-Li-Zr系ではその差異が大きかった。何れの合金系においても圧縮成型体の【10^(-4)】Torrの眞空下の焼結或は高温下の加圧成型では酸化皮膜の破壊が起らず、1対20(Al-Cr-Zr系)および1対18(Al-Li-Zr系)で押出すと押出後部で破壊が生じ、かなりの分散が得られた。しかし引張試験後の破断面のSEM観察と、伸び,絞りの延性に大きな差異が認められた。Al-Cr-Zr系では本実験下のAr中で調製して押出を行えば、十分な延性と強度が得られるが、Al-Li-Zr系ではAr中で調製したテープを使用した場合も条件によっては十分な延性は得られなかった。
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