研究概要 |
アルミナ短繊維強化A6063アルミニウム合金の拡散溶接を行い、接合継手強さに対する接合表面処理、溶接条件およびインサート金属の影響を調べた。接合方向は、界面が繊維方向に直交するようにした。用いた接合表面処理は、電解研磨、施盤加工およびワイヤブラシである。電解研磨した接合表面には、マトリックス金属から突出した繊維が観察され、その突出高さは研磨時間と共に増加した。電解研磨の場合の接合強さは、他の場合と比べてかなり高くなったが、繊維の突出高さの増加と共に低下した。この接合強さの低下は、溶接圧力によって折られて接合界面上に横倒しにされた繊維がマトリックス金属間の密着化を妨げるためである。ワイヤブラシの場合は、ワイヤブラシの際に形成された無数の繊維破砕粒、ワイヤの摩耗粉の残存に起因する鉄濃度の増加が接合界面近傍で認められた。これらの繊維の破砕粒と鉄濃度の上昇のために、ワイヤブラシの場合、接合強さは最低となった。施盤加工仕上げの場合の接合界面近傍では、繊維の破砕粒は認められたが、その分布量はワイヤブラシの場合に比べて少なく、また鉄濃度の上昇は認められなかった。電解研磨仕上げの場合、インサート金属なしの直接接合でも、母材強さ並みの接合強さが得られたが、そのための溶接条件範囲は非常に狭く、また大きな溶接変形量を必要とした。このため、インサート金属として、A6063合金より低温の固相線を持つアルミニウム合金A2017,A7075,およびアルミニウムとの間に低温の共晶点を持つ銅,銀を適用し、接合部に液相が生成される温度域で拡散溶接を行った。その結果、いずれのインサート金属についても、直接接合の場合と比べて、広い溶接条件、また少ない溶接変形量で高い接合強さが得られ、特にA2017合金、銅インサート金属の場合は、2%以下の少ない変形量で母材破断する継手が得られた。
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