研究概要 |
フッ化物をはじめとするハロゲン化物ガラスは新しい機能性ガラス,特に赤外透過性に優れ、赤外光領域における種々の光学特性に特長を有するガラスとして開発が期待されている。近年、赤外特性のみでなく、結晶化機構,化学的耐久性,粘性などの諸物性およびガラス構造の解明に関する研究も報告されている。本研究では、Zr【F_4】-Ba【F_2】2成分系,これにNaF,Gd【F_3】,La【F_3】,Al【F_3】などを加えた3成分系,Zr【F_4】-Ba【F_2】-NaF-Al【F_3】およびZr【F_4】-Ba【F_2】-Al【F_3】-Gd【F_3】4成分系,さらにZr【F_4】を含まないAl【F_3】-Ba【F_2】-Ca【F_2】-Y【F_3】4成分系およびAl【F_3】-Pb【F_2】-Zn【F_2】3成分系ガラスの電気伝導度を測定し、イオン伝導機構を検討した。電気伝導度の測定は、低温高抵抗領域で微小電流計による直流伝導度を、高温低抵抗領域でLCRメーターとCole-Cole法による交流伝導度を測定した。またDSC法により各ガラスのガラス転移温度および結晶化温度も測定した。いずれのガラスの伝導度も室温とガラス転移温度の間で温度の逆数に対して直線的に変化し一定の活性化エネルギーを示すが、ガラス転移温度以上になると活性化エネルギーは急激に大きくなった。また試料のまわりの測定雰囲気を大気中、【N_2】ガス中,【10^(-3)】Torrの減圧いずれにしても伝導度の値に変化はなかった。Zr【F_4】-Ba【F_2】を主成分とするガラスの伝導度は組成によってあまり変わらず、最大でも1桁程度の違いであった。伝導の活性化エネルギーも70kJ/mol程度であった。しかしZr【F_4】を含まないAl【F_3】-Ba【F_2】を主成分とするガラスの伝導度はZr【F_4】-Ba【F_2】系ガラスより3桁ほど小さく、活性化エネルギーは90kJ/molほどであった。Al【F_3】-Pb【F_2】-Zn【F_2】系ではZr【F_4】-Ba【F_2】系と同じ程度であった。これらの測定値にBe【F_2】-CsF系フッ化物ガラスの報告値および他の諸物性を総合的に検討し、フッ化物ガラス中の電気伝導は非架橋フッ素イオンの移動により起こると決論した。
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