研究概要 |
本研究は、ファインセラミックス素材の一つとして注目されている炭化ケイ素ウィスカーを硫化物中間体(Si【S_2】あるいはSiS)経由で合成する新しい方法について検討したものであり、ウィスカーの最適生成条件,生成ウィスカーの性状,内部構造,強度特性および成長機構に関して以下の結果を得た。 1.最適条件:まず金属ケイ素を原料とする場合、【H_2】Sを共存させ1200〜1350℃で【C_3】【H_6】と反応させるとウィスカーがよく生成した。最適反応条件は反応温度1300℃,【C_3】【H_6】濃度約6%(水素中),【H_2】S濃度4〜5%,反応時間60分であった。この場合、供給炭素の炭化ケイ素への転換率は約16%であった。また硫黄を含有するシリコーンオイルを【H_2】中、1300℃で熱分解することによってもウィスカーが生成し、その生成量は硫黄含有量が多い原料ほど多かった。 2.諸特性:ウィスカーは白色綿状で、X線回折および電子回折の結果、β-型であじ成長方向は〈111〉であった。ウィスカー径は0.1〜3μm、長さは0.2〜10cmであり市販品に比べて高アスペクト比であった。透過電子顕微鏡で回折条件を変えて観察した結果、ウィスカー内部には成長方向に対して斜めに積層欠陥が多数存在していたが、強度低下の原因となる転位は存在していなかった。径1.8〜2.9μmのウィスカーの引張強度は170〜1460kg・【mm^(-2)】であり、【CH_3】Si【Cl_3】の熱分解あるいはSi【O_2】-C-【CH_4】の反応で生成したウィスカーの強度とほぼ同様であった。また弾性率の値も原料による差はなかった。 3.成長機構:走査、透過電子顕微鏡によりウィスカーの先端部を詳細に調べた結果、先端部は先細りや湾曲したものが多く、VLS機構成長の特徴である先端粒子の存在は認められなかった。この結果と熱力学的考察より、本反応系でのウィスカーはSi【S_2】あるいはSiS蒸気を中間体とするVS機構によって成長しているものと推察した。
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