研究概要 |
電解質溶液に匹敵するほどの高い伝導性を有するいわゆる「超イオン伝導ガラス」は、全固体電池や全固体表示素子を開発するための固体電解質として注目されている。本研究は、新しいタイプの超イオン伝導ガラスを開発すること、構造や導電機構を解明することなどを目的として行ったものであり主な成果は次の通りである。 1.AgI-【Ag_2】Ch-【P_2】【Ch_5】系(Ch=O、S、Se)超イオン伝導ガラスを作製し、ガラス転移温度、イオン伝導度、電子伝導度、イオン輸率などを測定し、ChをO、S、Seと変化させた影響や伝導機構を詳しく調べた。 2.AgX-【Ag_2】O-Ge【O_2】系(X=I,Br,Cl)超イオン伝導ガラスを作製した。上記1と対照的に、XをI,Br,Clと変化させたときのガラス生成域やガラス転移温度などに対する影響を明らかにした。 3.新しいタイプのリチウムイオン伝導体としてLi【BO_2】-LiB【S_2】系オキシスルフィドガラスを作製した。広い組成域にわたり均質なガラスが得られ、またアニオンを混合したことによって導電率の組成依存性に極大が見られ、これを混合アニオン効果と名付けた。 4.【Li_4】Si【O_4】-【Li_3】B【O_3】系は、超急冷によって広い組成域でガラスが得られ、、この場合も導電率の組成依存性に極大が現れ、上記2と同様、混合アニオン効果が見られた。 5.RFスパッタ法やRFマグネトロンスパッタ法によって、【Li_4】Si【O_4】-【Li_3】B【O_3】系の薄膜化を行った。ターゲット組成、混合ガス比、ガス圧など、イオン導電性の高い薄膜の得られるスパッタ条件を確認した。 6.【Li_4】Si【O_4】-【Li_3】B【O_3】系ガラスの構造をラマンスペクトルによって調べた。その結果、この系のガラスは、化学組成から期待される通り、Si【O(-4^4-)】,B【O(-3^3-)】だけから成ることがわかった。
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