研究概要 |
大気中の【NO_x】,【SO_2】は酸化されてHN【O_3】,【H_2】【SO_4】となり酸性雨中に含まれる。だがその酸化の過程については、未だ不明な点が多い。本研究者は、浮遊粉塵中に含まれる半導体物質の不均一光触媒反応に着目し、一つの可能性として雨水中に溶存した【NO(^-_2)】,【NO_2】,【SO_2】がこの反応過程で酸化されることについて検討した。最終的には酸性雨生成におよぼす寄与を明らかにすることを目的としている。 本研究により明らかになった事実を以下に述べる。(1)各種半導体粉末を水に分散させて【NO(^-_2)】,【NO_2】,【SO(^(2-)_3)】の【O_2】による酸化に対して光照射下での光触媒活性を調べた。その結果から【NO(^-_2)】(30μM)の酸化に対してTi【O_2】,ZnO,【Ag_2】【O_1】,PbO,【Bi_2】【O_3】,CdSは強い光触媒活性を示した。また【NO_2】(30ppm)の酸化に対してはTi【O_2】が強い活性を示した。【SO_2】が水に溶解して生じる【SO(^(2-)_3)】の酸化に対して、Ti【O_2】,ZnO,【Fe_2】【O_3】がきわめて強い光触媒活性を示すことが明らかになった。(2)【NO(^-_2)】のTi【O_2】による光触媒酸化の速度と機構を、化学動力学的方法および電気化学測定により調べた。それにより、【NO(^-_2)】の【O_2】による酸化は局部電池機構により進行することがわかった。光照射により半導体粒子の価電子帯に生じた正孔が水を酸化して・OHや【HO(^-_2)】のような中間種を生じ、これらが【NO(^-_2)】を酸化するという反応モデルで実験事実が矛盾なく定量的に説明された。それにより反応速度が【NO(^-_2)】の濃度に見かけ上0次であることが明らかとなった。(3)大気浮遊粉塵中の光触媒活性種としてTi【O_2】ZnOを想定し、上述の結果に基いて大気の雲水滴中に含まれる【NO(^-_2)】の酸化速度を見積った。その際Ti【O_2】,ZnOの大気中濃度などの諸条件は、文献の実測値を参考にして定めた。このような検討により、雲水濃度0.2mg/【m^3】のとき、雲水中の100μMの【NO(^-_2)】は約11%【b^(-1)】のかなり早い速度で【NO(^-_3)】に酸化されると推定された。
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