研究概要 |
ケイ素官能基を有するアザジエンを開発し、ケイ素の特性を活用する新しい複素環合成や官能基変換を展開した。また、シリルアザジエン類の特性を解明する上で不可欠な基礎研究として、シリル基をもつイミン類についても反応性を明らかにし、複素環合成への応用法を確立した。 1.N-シリルアザジエンが合成困難なN-無置換アザジエンの等価体として有用であることを解明した。ケテンや酸クロリドとの反応では1.4-付加によるN-無置換ピリドン誘導体が、またエステルエノラートとの反応では1.2-付加体であるN-無置換アルケニル-β-ラクタムが合成できた。 2.N-無置換-β-ラクタムは化学修飾が容易で、例えば窒素原子をアルケニル化してビスアルケニル体とし、二塩化硫黄で処理することにより新規な含硫ビシクロ-β-ラクタムであるチアノナナム誘導体に導くことに成功した。 3.N-シリルメチルイミンが熱的なシリル基の転位によりアゾメチンイリド中間体となり、立体選択的にcis体のN-シリルアジリジンに転位することを見出した。またイリド中間体の分子間シクロ付加も明らかにした。 4.N-シリルメチルアザジエンが熱的に容易にN-シリルピロリンに変換されることを明らかにした。本反応の中間体であるアザジエン系を含むアゾメチンイリドをマレイミドなどの親双極子で捕捉することにより多官能含窒素5員環の形成が可能になった。さらにN-シリルメチルイミンおよびアザジエンのケテンとのシクロ付加で多官能β-ラクタムの合成法を開拓した。 5.N-シリルメチルアミドが互変異性によってイミンに移行することを利用し、シリル基の酸素原子への熱転位による新しいアゾメチンイリド発生法を開発した。この1,3-双極子のシクロ付加によるピロール,ピロリン系化合物の合成を展開し、新規な複素環合成法を確立した。
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