研究概要 |
本研究では従来知られていない新しいタイプの高機能性のホスフィン類ならびに関連化合物を開発し、リン元素の特性を駆使した応用化学的利用を計った。 第1章では、ジフェニルホスフィニル基で安定化されたα,ω-ジアニオンを塩化第2銅で酸化カップリングさせることより、1,2-ビス(ジフェニルホスフィニル)シクロアルカンの生成することを明らかにした。環元反応に及ぼす鎖長の影響について検討した。脂環部分が4員環の場合、ジベンゾイル酒石酸で光学分割出来ることを明らかにした。光学活性な1,2-ビス(ジフェニルホスフィニル)シクロブタンはトリクロルシランにより、相当する1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)シクロブタン(以下DPCBと略称)へ誘導した。この光学活性DPCBの絶対配置は塩化ニッケルとの錯体を合成し、X線解析することにより決定した。光学活性(+)-DPCBより新しいタイプのカチオン性ロジウム錯体【〔Rh・(+)-DPCB・(1,5-COD)〕^+】B【F(Λ-_4)】を調整し、デヒドロアミノ酸の不斉還元を行った。良好な光学収率(〜90%ee)で不斉還元することに成功した。また新しいタイプの二座配位子である2-アミノ-1-ホスフィノシクロアルカンの開発を行った。 第2章では、多目的利用が可能な(2-ジエトキシホスフィニルシクロブチル)ホスホニウム塩を開発した。このホスホニウム塩と種々のカルボニル試薬のダブルWittig反応により1,2-ビスイリデンシクロブタンを良好な収率で与えた。この1,2-ビスイリデンシクロブタンは2当量の親ジエン試薬と連続Diels-Alder反応を行い、多官能多脂環化合物に誘導出来ることを明らかにした。また水素添加を行うと、1,2-ジ置換シクロブタンを良好な収率で与えた。一重項酸素との反応では、1,2-ジアシル置換シクロブタンを与えた。以上要するに、本研究で得られた結果は、当初の計画を概ね達成出来たものと結論できる。
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