研究概要 |
本研究は天然から潤沢に供給される,安価な光学活性ヒドロキシカルボン酸類のより高度な利用の指針となる基礎を確立することを目的とする。その中心的な手法は,これらの原料を新たに開発した選択的還元法によって従来入手困難あるいは不可能であった様々なキラルシントンに変換する点に特徴がある。本選択的還元法は光学活性ヒドロキシカルボン酸エステルの水酸基で指向される極めて効率的な選択的合成として,Lーリンゴ酸エステルやL-酒石酸ジエステル誘導体の水酸基におり近いエステル基を高い化学選択性で還元することを可能とする。この結果得られる光学活性3,4-ジヒドロキシブタナ酸エステルやα-置換-3,4-ジヒドロキシブタン酸エステルにはカルボニル官能基が1個残存しており,かつ3,4-ジヒドロキシル基の選択的保護が極めて容易であると言う二つの利点を有している。この構造的特徴は引き続く合成変換の可能性の拡がりを約束する。この特徴を基軸とした合成について鋭意検討をした結果、γ-ラクトン誘導体,シス及びトランス-2,3-エボキシエステル誘導体,(S)-グリセルアルデヒドアセトニド,カルニチン及び非天然型多官能性アミノ酸類,β-ラクタム誘導体,ヘテロ環化合物,オクタヒドロナフタリン誘導体,あるいはシクロペンタン誘導体等,多様な合成中間体へ誘導可能であることが明らかになった。更にシクロペンタン誘導体合成に際して採用したエン環化戦略は,これに要求されるアカルバサイクリンの新規短段階合成法の開発に結実した。その合成法は従来のいずれのものと比較してもその合成行程は短く,かつプロスタグランディン類の合成では無価値であった(S)-4-ヒドロキシシクロペンテノンに新しい付加価値を与える結果となった。
|