研究概要 |
ガラス転移温度Tgを包含する広い温度域において、非多孔質高分子膜の気体・蒸気混合物に対する選択透過機構を明らかにすることを目的として、ポリエチレン(PE)延伸膜,ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン][P(TMSP)]膜,ポリ酢酸ビニル(PVAc)膜への気体・蒸気及びその混合物の透過挙動を調べた。 1.二軸延伸PE膜への、25℃,1気圧以下の圧力域におけるメタン/イソブタンの透過挙動は、自由体積モデルによってよく説明された。われわれが以前に研究したABA型のスチレン-ブタジエンブロツク共重体膜への炭化水素気体混合物の透過測定結果と併せて、ゴム状高分子膜への気体・蒸気混合物の選択透透過特性は自由体積概念によって解釈され、また定量的に予測できることが明らかになった。 2.P(TMSP)膜への、二酸化炭素,イソブタン,アセトン蒸気より成る2成分混合物の透過測定を、30℃,全圧1気圧という条件下で行った。透過挙動は、ポリイミド膜等についての測定結果に基づいて提出された二元移動度モデルの予測とは、全く異なるものであった。P(TMSP)膜についての測定結果の一部はむしろ、系の自由体積を考慮することによって説明された。ガラス状高分子膜への気体・蒸気混合物の透過に関して、このような結果が見いだされたのは国内外を問わず最初であり、ガラス状高分子膜の低分子選択透過機構に対して、P(TMSP)のトリメチルシリル基のように、大きい側鎖、並びに主鎖の分子運動性が極めて重要な因子であることを示すものである。 3.PVAc膜への気体、蒸気の拡散・透過測定を、Tgより若干高い温度域で行った。この領域における低分子の輸送過程はフィック型ではなく、高分子鎖の緩和機構も過程に大きく寄与していることが明らかになった。
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